電脳遊戯 第20話


ゼロの正体はルルーシュ。
スザクの告白に三人は絶句した。

「だから余計にカグヤや黒の騎士団はルルーシュに冷たく当たっていたんだ。自分たちが殺し損ねた男が目の前にいるからね。ルルーシュが真実を語れば自分たちの地位は地に落ちる。だからその話が出る前に・・・と思ったんだろう」

そう話をしていくうちに、ニーナは言葉をようやく理解したのか、その顔は鬼のような形相に変わった。

「ルルーシュは!?ルルーシュは何処!ユーフェミア様の仇!!」

ニーナは半狂乱になりながら叫んだ。
ユーフェミア様の仇!許さないとC.C.に詰め寄る。
だが、そんなニーナなど怖くはないとC.C.は覚めた視線を向けた。

「落ち着け女。本当の仇ならすでにルルーシュが討った」
「本当の仇ですって!?ユーフェミア様を殺したのはルルーシュなのよ!!」
「そうだな。妹を溺愛するルルーシュが、愛する妹、ユーフェミアを手にかけた。お前たちは知らないだろうが、ユーフェミアの初恋はルルーシュだし、ルルーシュの初恋もまたユーフェミアだ。あの二人はそれだけ仲が良かったんだよ」
「「「え!?」」」

スザクを含め、全員がC.C.の言葉に驚きの声を上げた。
ルルーシュとユーフェミアが兄妹。その考えがなかったのか、互いが初恋だという話に驚いたのか、ニーナは僅かに表情をゆるめ、C.C.に掴みかかろうとした腕を引いた。

「ユーフェミアは将来ルルーシュのお嫁さんになるのだと、ナナリーと取り合っていたんだ。知らなかっただろ?」

C.C.はそう言いながらスザクを見た。
スザクは驚き声も出ない様子だったが、こくこくと首を縦に振った。

「更に言うなら、ルルーシュの母マリアンヌには仲の良い二人を将来夫婦にという考えもあった。それだけ仲の良かった妹をルルーシュはその手で殺した。・・・あの妹馬鹿が理由もなく殺すはずがないだろう?それともお前たちはナナリーを殺すルルーシュを想像できるか?それと同じことなんだよ」

ナナリーを溺愛していたルルーシュが、ナナリーを殺す?
あのルルーシュが、ナナリーを?
喧嘩をする姿すら見たことがない、手を挙げる事さえ考えられない。
それは有り得ないこと、想像など出来るはずがない事だと、ニーナは怒りを消し、困惑したように眉尻を下げた。

「そんなに仲が良かったの?ルルーシュは、ナナリー様と」

ミレイの言葉に、ニーナはえ?と声を上げた。

「何を言ってるのミレイちゃん?ルルーシュ・・・君は、ナナリーちゃんを、それこそ目に入れても痛くないほど溺愛していたじゃない」

変なこと言わないでよとニーナは言ったが、ミレイとリヴァルは完全に困惑したようにニーナを見つめ返し、首を振った。

「え!?知らないわよ私」
「俺も知らないぜ?」

嘘や冗談ではなく、本心から言っているようにしか見えなかった。

「え!?どうして!?ナナリーちゃんはルルーシュ君とクラブハウスに住んでいたし、生徒会室にもよく来ていたじゃない!」

記憶に無いと困惑した表情で首を振る二人に、ニーナはなんで!?と声を荒らげた。知っているはず、いや知らない。そんな言い合いがしばらく続いた時、C.C.がじっとスザクを見ている事に気がついた。三人もスザクへ視線を向けると、スザクは眉を寄せ顔を逸らした。この状況の答えをスザクは知っているのだということが解る。
この場で説明する責任はスザクにあると思うが、そこは逃げるのか。C.C.はスザクの反応に呆れたように息を吐いた。

「記憶を消されているんだよ、そこの二人は。ニーナ、お前は学園から離れていたことで難を逃れたに過ぎない。ルルーシュもまた記憶を書き換えられ、皇子であったこと、ゼロであったこと、ナナリーのこと、母が暗殺されたこと・・・全てを忘れさせられた。それだけじゃない。ルルーシュという名も消され、全く別人として戦場にも出ていたんだよあいつは」
「「「え!?」」」
「スザクを護衛とし、全くの別人に作り上げた息子を戦場に送り出した・・・そう、皇帝が消したんだ。ナナリーのことも全てな」
「そんな・・・嘘でしょ?本当に、ナナリー様が、アッシュフォードに?」
「いやいやいや、有り得ないって。ルルーシュの兄弟はロロだろ!?」
「ロロ?ロロって誰?」

困惑したニーナの言葉に、リヴァルとミレイはさっと顔色を変えた。

「ロロは他人だ。1年前にルルーシュの監視と、ルルーシュの記憶が戻ったら殺すよう命じられた皇帝直属の暗殺者。それがロロだ」

C.C.の言葉に皆が息を呑んだ。

「・・・本当の話だよ。ロロがアッシュフォードにいるときは、その直接の上司が僕だったんだ。ロロだけじゃない、ヴィレッタや他の教師も全員僕の部下。皇帝直属の機密情報局の人間で、1年前にルルーシュを学園に閉じ込め監視するために集められたんだ」
「どういうこと!?なんでルルーシュを閉じ込めて監視なんて!」

ミレイは声を荒らげスザクに詰め寄った。
いつの間に自分たちの学園がそんなことにと、ミレイは怒りを露わにしていた。

「私を捕らえるためだ」

C.C.は冷めた声でそう答えた。

「あなたを?」
「私はゼロであるルルーシュの共犯者。ブリタニアを破壊するルルーシュに手を貸す者。そして、皇帝は私の力を欲していた。姿を隠した私を釣るための餌としてルルーシュをあの学園内で飼っていたんだよ」
「・・・力?」
「私には人と異なる力がある。それを上手く使えば、この世界の支配だけではなく、世界そのものを壊し、自らが神として立つことも可能だった。だが、ゼロは・・・ルルーシュはそれを良としなかった。第二次東京決戦で黒の騎士団に裏切られたルルーシュは、たった一人でシャルルの元へ向かい討ち倒した」

みなはゴクリと固唾を呑んだ。
スザクも知っている話だが、スザクが知らない情報も口にしているため、C.C.の言葉を真剣に聞いているようだった。

「シャルルはルルーシュを恐れていた。幼いながらも優秀だったルルーシュに対し、お前は死んでいると冷たい言葉を投げかけ、死んで来いと日本へ人柱に出したが、それでもルルーシュは生き延びた。ルルーシュの目的はブリタニアという国と、父である皇帝を倒すこと。その目標を胸にゼロとなり、戦った。全ては母を殺し、妹の目と足を不自由とした皇帝の共犯者を倒すため。そして、世界が失われる前に愚かな皇帝を打ち倒すため」

そしてC.C.はスッとニーナに視線を向けた。

「行政特区。あの日のユーフェミアは日本人を殺すよう命じた。あれはユーフェミアの意志だったと思うか?」
「い・・・いえ!ユーフェミア様がそんなコトするはずがない!」
「そうだ、するはずがない。だが、実際には行われた。・・・ルルーシュには力がある。私が与えたギアスという名の力だ。ルルーシュが命令を下せばその命令に誰もが忠実に従う。ユーフェミアはルルーシュの命令で虐殺を行った」

淡々と語られる言葉に全員が息を呑んだ。
スザクも驚きC.C.を見た。
行政特区の真実。
あの日何があったのか何度も問い詰めたが、日本人を決起させるため利用したという回答以外口にすることはなかった。
それをなぜ今。

「だが、先程も言ったがルルーシュはユーフェミアを愛していた。だから、あの時あの坊やはユーフェミアと共に行政特区を成功させる道を選んだ」
「そんなはずはない!ルルーシュが同意するなんてありえない!」

激高したスザクの言葉に皆が驚きの視線を向けた。スザクは知らないのだ、今語られている内容を。スザクの表情は憎しみに塗りつぶされていて、これが嘘や演技だなんて思えなかった。

「お前はルルーシュを知っているようで知らないんだな。ルルーシュはユーフェミアには勝てない。いや、ユーフェミアとナナリーにはどう足掻いても勝てないんだ。真剣に説得されれば、ルルーシュは必ず折れる」

あいつのシスコンぶりを見ていたはずだぞ。
その言葉に、スザクはますます眉を寄せた。
ルルーシュはナナリーのお願いを断れない。
どんなに困難な願いでも、必ず叶えようとする。
その姿を幼い頃から何度も目にしていたスザクは一瞬言葉を飲んだ。

「・・・っ、じゃあなんで!」
「暴走だ」
「暴走!?」
「ギアスの暴走。最悪のタイミングでルルーシュの力は暴走した。そもそもギアスとはその体を蝕み、時間とともに成長する。そしてその呼び名の通り、力の制御が効かない状態だ」

ルルーシュの意志でギアスをかけたわけではない。
C.C.は感情をコメずに淡々と説明をした。
過程を見ればそれは事故かもしれない。だが結果的にルルーシュはユーフェミアにギアスを掛けて操り、虐殺は行われた。

「・・・だとしても、やはり原因はルルーシュだ」
「そうだな。おそらく、ルルーシュはユーフェミアに自分の持つ力について説明でもしたのだろう。そして、こんな事を言っても絶対に従うんだ、という例え話でもしたんだろうな。アイツは愛する妹に問われれば、隠し事など出来ない男だ」

そうでなければ、あのような命令はありえない。

「それは憶測だ!」
「だが、真実に一番近いだろう。ルルーシュには伝えていないことだがギアスの暴走が速すぎた。私の経験上あと2年は暴走などしないはずだった。だがあいつは1年と経たずに暴走させた。そんな芸当が出来る人物を私は一人だけ知っている」
「・・・誰?」
「V.V.だ」
「!!」

誰?という顔で3人は眉を寄せたが、スザクが息を呑み顔を強張らせたことで、ブリタニアの関係者だということを悟った。

「私には無理だが、V.V.はギアスを強制的に成長させる力がある。暴走の兆候すら無かったルルーシュが、あの日あの場所で突然暴走した。おそらくあの式典会場の何処かにいたんだろうなV.V.は。そして中の様子を盗聴器か、監視カメラで確認しながら、ルルーシュのギアスを強制的に成長させ、最悪のタイミングで暴走するように仕向けた。アイツならやりそうなことだよ」

V.V.ならば暴走よりも先の段階への成長でさえ1日もあれば出来るのだから。

「V.V.は、そういうことをやりそう・・・なのか?」
「ああ。あいつはルルーシュを恨んでいた。ルルーシュだけではない。マリアンヌもナナリーもな。シャルルの愛情がマリアンヌとその子に向いたが許せなかったんだよ・・・マリアンヌを殺害し、ナナリーに障害を与えた犯人はV.V.なんだ」

V.V.。
あの日、ユーフェミアが亡くなったあの時。
ルルーシュのギアスのことを教えてくれた子供。
あまりにも内情を知りすぎていたあの子供が、ルルーシュとナナリーの母親の仇で、ナナリーから自由に動くための足と、視力を奪った。
その言葉に、スザクは自分の体が震えるのを抑えることが出来なかった。

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